6月18日、Matthias BastianがThe Decoderに「Google's Gemini co-lead Noam Shazeer joins OpenAI after two-year return stint」と題した記事を公開した。GoogleでGeminiの共同リードを務めたNoam ShazeerがOpenAIへ移籍したことを伝える内容だ。
Transformerを生んだ論文の共著者が、Googleを離れる
Noam Shazeerは、現代のAI技術の根幹をなす「Attention Is All You Need」の共著者だ。2017年に発表されたこの論文はTransformerアーキテクチャを世に広め、GPT系モデルをはじめとするほぼすべての大規模言語モデルの基礎となっている。さらに大規模モデルの効率化に不可欠なMixture of Experts(MoE)の先駆的研究にも深く関与し、LaMDAやPaLMといったGoogleの主要モデルの開発にも携わってきた。その人物が、Geminiプロジェクトのリードを離れ、OpenAIへと移籍した。
ShazeerはX上で「去るのは難しい決断だった(It was a hard decision to leave)」と投稿し、Googleでの経験に謝意を示した。
複雑な経歴:Google → Character.AI → Google → OpenAI
Shazeerの経歴は単純ではない。
- 2000年:Googleに入社。検索エンジンのスペルチェッカー改善などを担当し、その後AI研究の中核を担う存在へ成長した
- 2021年:Googleを退社し、AIチャットボットスタートアップ「Character.AI」を共同創業。同サービスはリリース直後から爆発的なユーザー数を獲得し、一時はChatGPTと並ぶ注目を集めた
- 2024年:Googleは27億ドル規模のライセンス契約を通じてCharacter.AIの技術を取得し、Shazeerと共同創業者のDaniel De Freitas、および研究チームの一部がGoogleに復帰する形を取った(Character.AI自体は独立したサービスとして継続)。ShazeerはエンジニアリングVP(Vice President)としてGeminiプロジェクトに合流した。当時GoogleはOpenAIやAnthropicに対して推論能力で後れを取っており、その差を埋めることがShazeerに課されたミッションだった
- 2026年:そのミッションを道半ばにして、競合の一角であるOpenAIへ移籍
Googleにとっては、27億ドルの契約を通じて確保したはずの人材が、今度は直接の競合相手の戦力となるという皮肉な結果だ。
2026年最大の人材移籍案件
記事では今回の移籍を、2026年に入ってからのAI業界で最大規模の人材ニュースと位置付けている。比較として言及されているのが、元OpenAI研究者のAndrej Karpathyだ。Tesla AI部門やOpenAIでの功績で知られるKarpathyは、古巣のOpenAIではなくAnthropicへの参加を選んだことで注目を集めたが、Shazeerの件はそれをも上回るインパクトと評されている。理由は明確で、ShazeerはAIの基礎アーキテクチャそのものを設計した人物であり、特定のラボの枠を超えた業界的シンボルだからだ。
Geminiは、Shazeerのほか**Jeff DeanやOriol Vinyals**といったトップ研究者が共同でリードしてきたプロジェクトだ。Shazeerの離脱が今後のGeminiの開発体制にどう影響するかは、現時点では明らかにされていない。
ShazeerがOpenAIで具体的に何を担当するかも未発表だ。フロンティアモデル開発か、アーキテクチャ研究か、あるいは別の役割か。Transformerの設計者の一人が競合ラボの屋根の下に入ったことは、AI業界の地殻変動の一端を示す出来事として記憶されることになるだろう。
詳細はGoogle's Gemini co-lead Noam Shazeer joins OpenAI after two-year return stintを参照していただきたい。




