6月21日、Los Angeles Timesが「Trump tried to block states from regulating AI, but some are forging ahead」と題した記事を公開した。トランプ大統領がAI規制を阻止する大統領令を発令しているにもかかわらず、多くの州が独自の規制立法を加速させており、連邦と州の間でAI規制の主導権争いが本格化している。
連邦vs.州——AI規制の主導権争い
トランプ大統領は就任後、州によるAI規制を抑制する大統領令を発令した。具体的には、司法長官に対して「最低限以上の負担を課す」州法に異議を申し立てるタスクフォースの設置を指示し、商務省には問題のある規制のリスト作成を命じた。さらに、AI規制法を持つ州へのブロードバンド展開プログラムなどの補助金を制限すると脅している。
その背景にあるのは、中国とのAI覇権争いだ。トランプ政権は、AIへの数兆ドル規模の投資が進む中で、州ごとに規制がバラバラになることを「レースにおけるリスク」と位置づけている。
ところが、この圧力は州の立法意欲をほとんど削いでいない。米国の非営利プライバシー政策シンクタンクである「Future of Privacy Forum」の政策ディレクター、ジャスティン・グラック氏によれば、今年の法案提出数は昨年を上回っており、共和党からの提案も含まれているという。
イリノイ州の動き——独立心と超党派の支持
最も注目されるのがイリノイ州の動向だ。民主党のプリツカー知事の署名待ちとなっている法案は、カリフォルニア州・ニューヨーク州が昨年成立させた法律を土台に、大規模AIモデルの開発者に対して生物兵器攻撃・大規模停電・大規模ハッキングといった「カタストロフィック」なリスクを防ぐプロトコルの策定を義務付けるものだ。
イリノイ州はここに独立監査人によるコンプライアンス審査の義務を追加した。これはAI開発者の製品への説明責任を強化する方向性として評価されている。
法案を提案した民主党のメアリー・エドリー=アレン州上院議員は、トランプ大統領の圧力についてこう一蹴した。
「イリノイのことをご存知かどうかわかりませんが、私たちはかなり独立心が強いんです」
この法案はほぼ全会一致に近い支持を集めており、共和党議員も含めて、連邦政府が生んだ規制の空白を州が埋めることへの意欲が示された形だ。
子どもとチャットボット——共和・民主を超えた規制の波
子どもとAIチャットボットの接点を規制する動きは、党派を超えて広がっている。コロラド、コネチカット、アイダホ、アイオワ、ネブラスカ、オレゴンといった州がそれぞれ法律を成立させた。
共通する方向性は3点だ。①AIと人間のどちらと対話しているかの開示、②未成年者との対話制限、③チャットボットに渡したデータのプライバシー保護。
コネチカット州はさらに踏み込み、ユーザーと継続的な関係を構築する「コンパニオンチャットボット」に関する規定を新設した。18歳未満との対話には、自傷・自滅行動を促さないようプログラムされていること、および保護者が利用管理できるツールを提供することが条件とされる。
採用・解雇・融資——「AIが決める」ことへの規制
カリフォルニア州では「No Robo Bosses Act of 2026(ロボ上司禁止法案)」が審議中だ。AIだけを根拠に労働者を解雇・懲戒することを禁止する内容で、子ども向けチャットボットの出力を広告目的に使用することも禁じる。
コロラド州は5月、雇用・教育・住宅・銀行などの重要分野でAIシステムを使う企業に対し、AIが意思決定に影響を与えている場合はその旨を当事者に通知することを義務付けた。これは、採用・住宅ローン・医療といった場面でAIが差別的判断をするリスクへの対応だ。ただし、2024年の法律と比べると、民主党のポリス知事の圧力もあり内容は後退している。
抵抗する州も——フロリダとユタの事例
すべての州が独自立法を推進しているわけではない。フロリダ州では、共和党のデサンティス知事が推進したAI「権利章典」法案が州下院で葬られた。下院議長のダニエル・ペレス議員(共和党)は「AI規制は連邦政府の管轄」というトランプ大統領の立場を支持した。デサンティス知事は「連邦政府は動いていない」と反論したが、法案は通らなかった。
ユタ州では、ニューヨーク・カリフォルニアの法律を模範とした法案に対し、ホワイトハウスが「カテゴリカルに反対する」という一文のみのメモを州議会に送り、それにより審議が停滞した。フロリダ・ユタいずれの事例も、連邦政府の圧力が州の立法プロセスに直接影響を与えた数少ないケースとして注目される。一方で、これらが例外的なケースにとどまっているという点が、むしろ各州の立法意欲の根強さを裏付けている。
トランプ政権は現時点で、大統領令の執行に向けて州を提訴したり、補助金を実際に差し止めたりした実績はない。ホワイトハウスは「政策枠組みの実現に向けてパートナーと協力する意欲がある」とするにとどまっている。連邦での立法についても、下院での超党派草案が主要な民主・共和両党議員から激しい批判を受けており、先行きは不透明だ。
詳細はTrump tried to block states from regulating AI, but some are forging aheadを参照していただきたい。




