6月22日、NVIDIAが「NVIDIA Announces Halos for Robotics, the Industry's First Full-Stack Safety System for Physical AI」と題した記事を公開した。シカゴで開催中の産業用自動化展示会「Automate」に合わせ、ロボティクスおよびPhysical AI向けフルスタック安全システム「NVIDIA Halos for Robotics」を発表した内容だ。
自律走行で培った18,600人年の安全開発をロボティクスへ
NVIDIAは今回、NVIDIA Halos for Roboticsを発表した。同社が「業界初のフルスタック安全システム」と位置づけるこのアーキテクチャは、自律走行車向けに積み上げてきた18,600人年超のエンジニアリング実績をロボティクス分野へ転用するものだ。
Physical AI(物理的な環境でセンシング・判断・行動を行うAIシステムの総称)が工場や物流倉庫に本格展開される段階に入り、安全性の担保が業界共通の課題となっている。特に人間と同じ空間で稼働するヒューマノイドロボットでは、従来の機械安全規格だけでは対応しきれない層(AIモデル、センサーフュージョン、サイバーセキュリティ等)が存在する。
こうした課題は技術的なものにとどまらず、規制面でも急速に圧力が高まっている。欧州ではEU AI Actが段階的に施行され、物理的な危害をもたらしうるAIシステムは「高リスク」に分類されて厳格な適合性評価が義務付けられる。米国でもNIST AI RMF(AIリスク管理フレームワーク)が産業界に広まりつつあり、Physical AIの安全認証は「取得できれば強み」から「出荷の前提条件」へと変わりつつある。Halos for Roboticsはこうした規制環境の変化を背景に、ハードウェアからソフトウェア、認証支援までを一貫したアーキテクチャで覆うことを狙う。
フルスタックの構成:3つの主要レイヤー
Halos for Roboticsは以下の3レイヤーで構成される。
1. ハードウェア層:IGX Thor+Holoscan Sensor Bridge
NVIDIA IGX Thorは産業グレードのAIコンピュートプラットフォームで、安全機能を組み込み済みで提供される。Holoscan Sensor Bridgeはリアルタイムのセンサー接続を担う。両者の組み合わせで、ロボットが現実環境でリアルタイム処理を行うための基盤を構成する。
2. ソフトウェア層:Halos OS
Halos OSはロボット安全向けのソフトウェアスタックだ。コアとなるHalos Coreが安全関連の動作機能を担い、その上で動くOutside-In Safety Blueprintが外部カメラとAIエージェントを使いロボットの動作を動的に制御する。このBlueprintはすでにGitHubで早期アクセス公開されており、オープンソースとして提供される。
3. 認証支援:Halos AI Systems Inspection Lab
最も注目されるのがこの認証支援プログラムだ。ANSI National Accreditation Board(ANAB)の認定を受けたPhysical AI向け安全評価機関として、NVIDIAはTÜV Rheinland、UL Solutions、TÜV SÜD、exida、SGS、CertXといった主要認証機関と連携する体制を整えた。すでに40社超のメーカー、認証機関、安全ベンダーが参加している。
IEC 61508(機能安全の基本規格)、ISO 13849(機械安全)、ISO/IEC TR 5469(AIの機能安全)といった国際規格への適合を、認証取得前の段階でNVIDIAが検査・支援する仕組みだ。前述のEU AI ActやNIST AI RMFが要求する適合性評価プロセスに対し、このInspection Labが事前検査の役割を果たす位置付けとなる。
最初のユーザーはAgility Roboticsの「Digit」
発表と同時に、ヒューマノイドロボット企業**Agility RoboticsがHalos for Roboticsの最初の採用企業として名乗りを上げた。同社のヒューマノイドロボットDigit**はAmazon、GXO、Schaeffler、Toyota Motor Manufacturing Canadaなどの顧客向けに工場・倉庫・物流拠点で稼働している。
AgilityはDigitの安全人物検知システムにIGX ThorとHalos Coreを統合し、Halos AI Systems Inspection Labを通じてIEC 61508、ISO 13849、ISO/IEC TR 5469への適合確認を経た上で最終的な第三者認証を目指す。
エコシステムの広がり
Halos for Roboticsは単体製品ではなく、パートナーエコシステムとして設計されている。
- リアルタイムOS・ソフトウェア: Acontis、FreeRTOS、QNX — いずれもIGX Thor上で動作する産業用RTOSまたはミドルウェアを提供し、Halos Coreとの統合によって安全タスクのリアルタイム実行を担う
- 組み込みシステム: Advantech、NexCobot — IGXをベースにした安全設計済みの産業用コンピュートシステムを提供し、ロボットメーカーが安全ハードウェアをゼロから設計しなくても済む環境を整える
- センサー・半導体: Infineon、NXP Semiconductor、STMicroelectronics、Texas Instruments — ロボットの知覚層を担うセンサーや安全関連マイコンを供給し、Halos OSとのセンサーフュージョンを可能にする
- 産業アプリケーション: FORT Robotics、Inventec、KION Group、Lyte AI、Neurealm — Outside-In Safety Blueprintを活用した機能安全エージェントを開発中のほか、物流・製造現場向けの安全ソリューション統合を進めている
現時点の提供状況
- Halos Core for IGX: LinuxおよびLinux + QNX OS for Safety 8.0構成で、登録済み開発者向けに早期アクセスとして提供中
- Outside-In Safety Blueprint: GitHubにてオープンソースで早期アクセス公開中
技術的な詳細は公式テクニカルブログにも掲載されている。
詳細はNVIDIA Announces Halos for Robotics, the Industry's First Full-Stack Safety System for Physical AIを参照していただきたい。




