6月24日、ZME Scienceが「DeepMind's CEO Says AGI Could Arrive Around 2030. The Scary Part Is How Unready We Are」と題した記事を公開した。Google DeepMindのCEOであるDemis Hassabisが「AGIは2030年頃に到来する」と明言し、それ以上に深刻な問題として社会の準備不足に警鐘を鳴らしている——技術的な到達点よりも、人類がその変化に追いついていないことへの懸念が、この記事の核心だ。
「2030年±1年」——Hassabisが示した具体的な数字
Demis HassabisはStanford Graduate School of Businessでのインタビューで、AGI(汎用人工知能)の到来を2030年前後と予測した。
「私たちはそこから数年しか離れていないと信じている。おそらく2030年、プラスマイナス1年——本当に驚くべきことだ」
AGIとは、コーディング、科学研究、創作活動など、あらゆる知的タスクで人間と同等以上の能力を持つAIのことを指す。現在の「ナローAI」(翻訳や囲碁のような特定タスクに特化したAI)とは異なり、AGIは人間が再プログラムしなくても、まったく新しいスキルを自律的に学習・応用できる点が本質的に異なる。
この発言の重みは、Hassabisの実績を踏まえると増す。DeepMindはAlphaFoldでタンパク質の3次元構造をアミノ酸配列から予測する「タンパク質折り畳み問題」を解決し、2024年のノーベル化学賞を受賞した。従来、科学者たちが数十年かけて15万種のタンパク質構造をマッピングしたのに対し、AlphaFoldは地球上のほぼすべての既知タンパク質に相当する2億種以上の構造を予測・カタログ化した。
Hassabis自身はAGIを「科学のための究極のツール」と表現し、DeepMindのミッションを「ステップ1:知能を解く。ステップ2:それを使って他のすべてを解く」と端的にまとめている。
業界内でも割れる予測
AGI到来の時期をめぐっては、AI業界のトップ間でも見解が分かれている。
- Sam Altman(OpenAI CEO):「人類はデジタル超知性の構築に近づいている」とブログに記述
- Dario Amodei(Anthropic CEO):AGIは2026〜2027年に到来しうると2024年に予測
- Shane Legg(DeepMind チーフAGIサイエンティスト):「最低限のAGI」が2028年に到来する確率を**50%**と見積もる。ここでの「最低限のAGI」とは、一部の認知タスクで人間に追いつくが、あらゆる面で人間を超えるわけではないAIを指す
- Yann LeCun(Meta チーフAIサイエンティスト):「汎用知能という概念は完全にナンセンスだ」と一蹴。現在の大規模言語モデルが人間レベルの知性に達する可能性は低いと主張
※元記事ではLeCunの肩書きを「Meta's Chief AI Scientist」と記載している。
Hassabis自身も、業界の一部が予測に「あまりにも確信を持ちすぎている」と釘を刺している。ただし、準備を急ぐ必要があるという警告は繰り返し発している。
「社会はこれが何を意味するかを準備する時間があまりない。それは非常に深刻な問題だ」
既に始まっている雇用への影響
AGIはまだ到来していないが、現在のAIによる雇用への影響はすでに顕在化している。元記事によれば、2026年上半期だけで世界全体で15万人以上がAI関連の理由で職を失ったとされる。
具体的な事例として記事が挙げているのは以下のとおりだ:
- Amazon:6ヶ月間で3万人を削減
- Block:2月に全従業員の**40%**を削減
- Meta:全従業員の**10%**を削減し、AIインフラへの投資に充当
- CloudflareやCheggなどの中小テック企業も同様の傾向
Amodeiは「5年以内にホワイトカラーのエントリーレベル業務の半分が消えうる」と警告している。
Hassabisはそれでも、人間が生き残る余地はあると主張する。「センス、デザイン感覚、独創的な思考、異なる分野を統合する力を持つ人は、今後5年間で優位に立てる」という見方だ。
「準備できていない」ことへの警告——規制と制度設計の遅れ
Hassabisが最も強調するのは、AGIのポテンシャルよりも社会・制度側の準備不足だ。良い方向に使えば医療研究の加速、新素材の設計、気候モデルの改善、核融合エネルギーの推進に貢献しうる。一方で悪用された場合、病原体の設計、サイバー攻撃の自動化、ディスインフォメーションの大規模化といったリスクが現実化する。
この「準備不足」は抽象的な懸念にとどまらない。雇用の喪失が大規模に進行する一方で、それに対応するリスキリング政策や社会的セーフティネットの整備は各国で遅れており、AGIが到来する以前の段階ですでに制度的な空白が生じている。Hassabisが「社会はこれを聞く必要がある」と繰り返す背景には、技術の進展速度と政策立案の速度との乖離への強い危機感がある。
そのためHassabisは、モデルの能力を独立機関が評価する仕組みを含む「賢く、的を絞った規制」を明確に支持している。無制限の開発競争ではなく、能力評価と安全検証を制度として組み込む必要性を訴えている点は、同業他社のCEOとの姿勢の違いとして元記事も注目している。
「まだやるべきことはたくさんあり、これはほんの始まりに過ぎない。社会はそれを聞く必要がある」
詳細はDeepMind's CEO Says AGI Could Arrive Around 2030. The Scary Part Is How Unready We Areを参照していただきたい。




