6月30日、The Decoderが「Deloitte tells its own consultants: AI is coming for the billable hour」と題した記事を公開した。DeloitteがAIの台頭により時間単価ベースのコンサルティングモデルが急速に縮小しつつあると、自社コンサルタントに警告した内部イベントの内容を報じている。
「ビジネスモデルは終わった」——Deloitteが社内向けに見せたグラフ
Deloitteの米国公共セクターコンサルティング部門のリーダーであるJason Manstofは先月、社内タウンホール(全社説明会)で1枚のグラフを提示した。2035年に向けて時間ベースのコンサルティング業務が急速に縮小するというものだ。グラフ下部の緑色のバー——業界の主力収益源である「時間課金(billable hour)」——は、2035年にはプロフェッショナルサービス市場全体のごく一部に収縮している。
なお、billable hour(時間課金)モデルとは、コンサルタントや弁護士などのプロフェッショナルサービス業界で長年主流とされてきた課金方式で、稼働した時間数に単価を掛けて請求する仕組みを指す。日本のSIer・受託開発業界における「人月商売」に相当する概念だと理解するとわかりやすい。
Manstofはウェブキャストでこう述べた。「あまり良いニュースではありませんが、その種の業務は2035年においても依然として一定の存在感はあるものの、全体像のほんの一部になるでしょう。」AIエージェントが指数関数的に成長し、2035年までに拡大するプロフェッショナルサービス市場の大半を占めるようになると語った。
この説明会に参加したDeloitteのあるコンサルタントは、Wall Street Journalにこう語っている。
「私たちのモデルは終わりだと、暗に強く示唆していた。基本的にロボットに置き換えられるということだ。」
Deloitteの広報担当者は、同社が「人間主導、AI活用型のシフトを業界でリードするために多大な投資を行っている」とコメントした。
コンサル業界全体が揺れる「実存的なスクランブル」
時間課金モデルへの圧力はDeloitteだけの問題ではない。コンサルティング業界全体が、ソフトウェアやプロダクトビジネスに近い形態への転換を模索している。具体的には、人月を売る代わりに固定価格のサブスクリプションやフラットレート型ソリューションを販売するモデルだ。
しかし移行は一筋縄ではいかない。プロジェクトが計画より長引けばコストを自社で負担しなければならず、入金が不規則になり、キャッシュフローの問題が生じる。また、成功の指標が主観的になりやすく、クライアントとの関係悪化にもつながりやすい。
McKinseyやBoston Consulting Group(BCG)は成果報酬型の価格モデルへの移行を積極的に進めている。Wall Street Journalによれば、McKinseyのシニアパートナーShelley Stewart IIIによると、McKinseyのグローバル収益の30%超がすでにそうしたモデルから生まれているという。
AIコンサルティングプラットフォームCatalantのCEOであるPat Petittiは、この動きを哲学的な選択とは見ていない。彼はこれを新たな収益モデルを求める「実存的なスクランブル(existential scramble)」と表現し、こう断言する。「AIが彼らのビジネスモデルを破壊している。」
エンジニア・SIer視点での読みどころ
この話がソフトウェアエンジニアや国内SIer関係者にとって他人事でないのは、「時間を売る」というビジネスモデルの崩壊がコンサル業界固有の問題ではないからだ。日本のSIerや受託開発、フリーランスの現場でも、AIによる作業効率の向上は「同じ成果物をより少ない時間で作れる」ことを意味し、時間単価での課金が難しくなる構造的な問題を内包している。人月単価を積み上げる見積もり慣行が根強い国内市場においても、この圧力は例外ではない。
移行先として業界が模索している成果報酬・定額モデルは、成果物の品質や事業インパクトで価値を測る方向への転換を意味する。エンジニアにとっては、「何時間働いたか」ではなく「何を達成したか」で評価・報酬が決まるキャリア設計が、より現実的な選択肢になりつつあるとも言える。
※以上の日本市場への接続・キャリア観への言及は編集部の考察であり、元記事には含まれない。
Deloitteが2035年の予測を自社コンサルタントに対して明示したという事実は、経営トップ層がすでに移行を不可避と判断していることを示している。billable hourモデルが「縮小する」のか「実質的に消滅する」のかについて元記事は断言を避けているが、Deloitte内部で提示されたグラフのメッセージは、業界関係者にとって十分に重い警告と受け取られたようだ。
詳細はDeloitte tells its own consultants: AI is coming for the billable hourを参照していただきたい。




