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OpenAIの元CTOがオープンウェイトで挑む — 9750億パラメータの「Inkling」は「トークン課金で知能を売る」競争とは別の軸で戦う

8月8日、StartupHub.aiが「Mira Murati Inkling vs OpenAI: Open Weight AI 2026」と題した記事を公開した。元OpenAI CTOのMira Muratiが率いるThinking Machines Labが公開した9750億パラメータのオープンウェイトモデル「Inkling」の戦略的位置づけについて詳しく論じている。

8月8日、StartupHub.aiが「Mira Murati Inkling vs OpenAI: Open Weight AI 2026」と題した記事を公開した。元OpenAI CTOのMira Muratiが率いるThinking Machines Labが公開した9750億パラメータのオープンウェイトモデル「Inkling」の戦略的位置づけについて詳しく論じている。


OpenAIの元CTOが「オープン」で勝負に出た

2026年7月15日、Thinking Machines LabはMoE(Mixture-of-Experts)アーキテクチャを採用した大規模モデル「Inkling」を公開した。総パラメータ数975B(9750億)、ライセンスはApache 2.0——つまり商用利用を含む完全なオープンウェイトリリースだ。

このモデルを主導するのは、Mira Murati。2018年からOpenAIのCTOを務め、2024年9月に退社後、2025年初頭にThinking Machines Labを設立した人物だ。OpenAIとAnthropicが「トークン課金のプロプライエタリAPI」という軸で競う中、Muratiはあえてオープンウェイトとカスタマイズできるインフラという別の軸で差異化を図っている。

その賭けの核心は単純だ——企業はコモディティ化した「知能」にトークン単価を払い続けるより、自分たちでコントロールできるインフラに高い対価を払う、という見立てである。


Inklingの技術仕様

MoE(Mixture-of-Experts)とは、全パラメータを毎回使うのではなく、入力に応じて一部のエキスパート(サブネットワーク)だけを活性化するアーキテクチャだ。推論コストを抑えつつ大規模なパラメータを持てる点が特徴で、GoogleのGeminiやMistralのMixtralでも採用されている。

Inklingの主要スペックは以下のとおりだ。

項目 Inkling Inkling-Small
総パラメータ数 975B 276B
1トークンあたりの活性パラメータ 41B 12B
学習トークン数 45兆トークン (同リリースで予告のみ)
コンテキストウィンドウ 100万トークン
対応入力モダリティ テキスト・画像・音声・動画
出力 テキスト
ライセンス Apache 2.0

45兆トークンの学習データにはテキスト・画像・音声・動画の4種類が含まれる。100万トークンのコンテキストウィンドウはGPT-4oの標準コンテキスト(128K)を大きく上回る。

Inkling-Smallは276B/12B構成で、Inklingとともにプレビュー公開された。


「モデルより先にファインチューニング基盤を出した」という順序

Thinking Machines Labの動き方として特筆すべきは、基盤モデルよりも先にファインチューニングプラットフォーム「Tinker」を製品としてリリースした点だ。

通常、LLMスタートアップは基盤モデルを公開してからツールを整備する。しかしMuratiのチームは逆の順序を選んだ。企業がモデルを自社データでカスタマイズする需要を先に押さえ、そのプラットフォームの「エンジン」としてInklingを投入する構造になっている。同社によれば、Tinkerはすでにエンタープライズ向けに提供が始まっており、Inklingはその実行基盤として位置づけられている。

Inklingは会社設立から18ヶ月後に初めてリリースされた自社基盤モデルだ。この期間、チームはファインチューニング基盤の構築と資金調達に集中していた。


OpenAI・Anthropicとの構造的な差異

OpenAIもAnthropicも、モデルの重みを非公開にしたままAPIアクセスを有料提供する戦略を採る。企業はモデルを「借りる」形になり、ファインチューニングの自由度やデータの扱いにも制約がある。

Inklingはその対極に位置する。Apache 2.0でフルウェイトを公開することで、企業は自社インフラ上でモデルをそのまま動かし、改変し、再配布できる。規制産業(医療・金融など)でデータをAPIに送ることを避けたいケースや、推論コストを自社でコントロールしたい大規模ユーザーにとって、構造的に異なる選択肢になる。

オープンウェイト戦略という観点では、Meta LlamaシリーズやMistralのオープンリリースとも比較されるが、Thinking Machines Labの差別化点はモデル単体の公開にとどまらず、エンタープライズ向けのカスタマイズ基盤をセットで提供する点にある。


まとめ

Muratiの構想は「トークン単価で知能を売る」競争とは異なる軸に立つ、という判断に基づいている。975BのオープンウェイトモデルをApache 2.0で公開し、その上でカスタマイズ基盤を売る——これがThinking Machines Labの現時点での戦略的立ち位置だ。

同社が設立からわずか18ヶ月でここまで到達した事実は、元OpenAI CTOというブランドと組織構築力を示すとともに、2026年のLLM競争が「誰が一番賢いモデルを作るか」から「誰が一番使いやすいインフラを提供するか」へとシフトしつつある現状を映している。この問いへの答えは、Tinkerを含むエコシステム全体がエンタープライズにどこまで受け入れられるかによって出るだろう。

詳細はMira Murati Inkling vs OpenAI: Open Weight AI 2026を参照していただきたい。