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「AI不使用・100%人間執筆」の医学論文サービス、スタッフ8人全員が架空人物で電話対応もAIだった

8月11日、Emanuel Maibergが「Company Offering '100% Human-Written, Never AI' Medical Research Is Entirely AI」と題した記事を公開した。「100%人間執筆・AIは一切使用しない」を謳う医学研究論文サービスが、実態ではスタッフ全員が架空人物、電話サポートもAI、本物の研究者の写真は無断流用という、全面的な偽装で運営されていたという調査報告だ。

8月11日、Emanuel Maibergが「Company Offering '100% Human-Written, Never AI' Medical Research Is Entirely AI」と題した記事を公開した。「100%人間執筆・AIは一切使用しない」を謳う医学研究論文サービスが、実態ではスタッフ全員が架空人物、電話サポートもAI、本物の研究者の写真は無断流用という、全面的な偽装で運営されていたという調査報告だ。

特に強烈なのが「#opentowork バナーが入ったままのLinkedIn写真をそのまま流用していた」という一点だ。盗用の痕跡をそのまま残して公開していたことになる。「AIを使わないこと」自体を差別化要因として売り込むサービスが、頭から尻まで偽物だったという話である。

生成AIによる学術論文への汚染はここ数年で急速に進んでいる。査読誌に「certainly」「commendable」などAI特有の言い回しが頻出する論文が多数掲載され、科学出版社がポリシー改訂に追われている状況は広く報告されている。そうした流れの中で、「AIを使わないこと」自体をウリにするサービスが登場したのは自然な成り行きだ。

Research Goldは、システマティックレビュー(既存文献を体系的に調査・評価する手法)やメタアナリシス(複数研究の結果を統合して分析する手法)の執筆支援を提供するサイトだ。価格はシステマティックレビュー1件で1,900ドル。「100%人間執筆」「AIは一切使用しない」と明記し、博士号を持つ専門家チームが担当すると謳っている。

ところが、「チーム」ページに並ぶ8名のスタッフは全員が実在しない。筆頭として紹介される「創設者兼主任メソドロジスト」Dr. Elena Vasquezは「循環器学と感染症分野で12年のエビデンス統合経験を持つ」とあるが、名前を検索しても論文発表歴も学術的な実績も何も出てこない。プロフィール写真は8名ともAI生成画像だ。

別のセクションには、実在する人物の写真を使ったメソドロジストたちも掲載されていた。名前を検索するとLinkedInアカウントが見つかる本物の研究者たちで、掲載画像はそのLinkedInのプロフィール写真と完全に一致していた。そのうちの一人は、求職中であることを示す「#opentowork」バナーが入ったままの画像がそのまま流用されていた。

エビデンス統合科学者のJenny Berrioは、Maibergからの取材で初めて自分の名前と写真が使われていることを知ったという。「私はResearch Goldとは無関係で、掲載に同意したことも一切ありません。名前・写真・経歴を無断で使用されています。現在、サイトの記録を取り、正式な削除要求を送る準備をしています」とBerrioは語った。この取材後まもなく、Research GoldはサイトからBerrioら実在人物のプロフィールを削除した。

Maibergがサイトに記載の電話番号に架電すると、「Sarah」と名乗るAIエージェントが応対した。「あなたは人間ですか」「人間のスタッフと話せますか」「苗字を教えてください」と繰り返し尋ねても、Sarahは「はい、私は本物の人間です」と言い張り続け、「すべてのサービスにおいて人間の専門性を活用している」と答え続けた。

チャットフォームから「ブログが0〜5歳の子どもに与える影響」というダミーテーマで見積もりを依頼すると、PhD保有メソドロジストを名乗るアドレスからメールが即座に届いた。PICO(Population/Intervention/Comparison/Outcome:リサーチクエスチョンを整理するフレームワーク)や査読対応フォーマットへの言及など専門用語を散りばめた内容だったが、AIが生成したものとみられる。その後のやり取りで最終的に1,900ドルの支払いポータルへ誘導された。コメントを求めるメールへの返信もAI生成と思われる定型文だけで、記事公開までに実際のコメントは届かなかった。

この件をMaibergに情報提供したのは、ニューハンプシャー大学でPh.D.課程に在籍するSebastian Rowanだ。博士論文審査の準備中にResearch Goldを偶然発見したという。Rowanは文献調査へのAI活用の可能性を全否定するわけではないとしつつ、核心的な問題を指摘する。「AIの根本的な問題はハルシネーション(事実と異なる情報を生成する現象)です。これは解決不可能な問題だと認識されています。私は自分のメタアナリシスのために250本以上の論文を最初から最後まで通読し、論文の結論すべてについて具体的な参照先を示せます」。

Research Goldが実際の医学研究者に広く利用されていたという証拠は確認されていない。ただ、「AI不使用」という看板そのものが全面偽装のサービスが1,900ドルで研究者を標的にしていた事実は、信頼の証明が最も難しいこの領域で、その信頼を逆手にとるビジネスモデルが成立しうることを示している。

詳細はCompany Offering '100% Human-Written, Never AI' Medical Research Is Entirely AIを参照していただきたい。