10月9日、DivyaがGBhackersに「Microsoft Teams to Introduce Deepfake Detection to Identify AI-Generated Audio and Video in Meetings」と題した記事を公開した。Microsoftが2026年11月を目処にMicrosoft Teamsへディープフェイク検出機能を導入予定であることが明らかになった。ただし「Teamsが自前で検出する」わけではなく、サードパーティプロバイダーに依存する統合フレームワーク設計であり、精度・データポリシーといった実運用上の核心情報はいまだ未公開だ。
ビジネス会議を狙うディープフェイク詐欺の深刻化
この機能が計画される背景には、オンライン会議を悪用したなりすまし詐欺の急増がある。代表的な被害形態がBEC(Business Email Compromise=ビジネスメール詐欺)のビデオ会議版だ。攻撃者がCFOや経営幹部の顔・声をリアルタイムで偽装し、従業員に送金や情報提供を指示するケースが世界各地で報告されている。
実際、2024年初頭には香港の多国籍企業で、ディープフェイクによるビデオ会議を使ったなりすまし詐欺により約2億香港ドル(約38億円)が詐取される事件が発生し、国際的に大きく報じられた。FBIも同年、AIを用いたリアルタイム音声・映像詐欺への警戒を呼びかける勧告を発している。
会議という「リアルタイムかつ疑いにくい場」が標的になりやすく、メールフィルタやフィッシング対策では防げないことから、エンタープライズ向けのAI生成メディア対策は業界全体の課題となっている。
TeamsにAI生成メディアの検出機能が来る
Microsoftは2026年11月を目処に、Microsoft Teamsでサードパーティによる合成音声・映像の検出をサポートする新機能を導入予定だ。Microsoftの公式ロードマップにロードマップID 573451 として登録されており、Desktop、Mac、Web の各プラットフォームが対象となる。モバイルへの対応は現時点で明記されていない。
「Teamsが検出する」わけではない
この機能の仕組みを正確に把握しておく必要がある。ディープフェイクを分析するのはTeams本体ではなく、認定済みサードパーティプロバイダーだ。
ディープフェイク(Deepfake):AIの深層学習(Deep Learning)技術を用いて、実在する人物の顔・声・動作を高精度に合成・改ざんした動画・音声コンテンツの総称。近年は生成AIの普及により一般的なツールでも作成可能になっている。
構造としては以下の通りとなる:
- サードパーティプロバイダーが会議の音声・映像を解析し、合成メディアの兆候を検出する
- 検出シグナルをMicrosoft Teamsに送信する
- Teamsはそのシグナルを受け取り、会議内でのユーザー体験に反映させる
つまりMicrosoftが提供するのは統合フレームワークであり、独自の検出エンジンではない。どのプロバイダーが認定を受けるか、どのような検出手法が使われるかは、現時点では一切公開されていない。
セキュリティチームが把握すべき未確定事項
ロードマップの記載は現段階では多くの詳細を欠いており、セキュリティ担当者は以下の点を「未確定」として扱う必要がある。
- 検出精度(信頼度閾値):偽陽性・偽陰性の情報は未公開
- レイテンシ:リアルタイム検出かどうか不明
- 対応アクション:参加者への警告表示、管理者通知、自動制限措置の有無が未発表
- データ取り扱い:プロバイダーによるメディアデータへのアクセス方法、保存ポリシー、処理ロケーション、同意要件が未規定
- ライセンスと管理設定:導入コストや設定方法も未発表
Microsoftはこの機能について「検出シグナルを活用できる」と述べているが、そのシグナルが何らかの強制的な制限に自動的につながるとは明言していない。検出結果は「分析上のシグナル」であり、真正性の保証ではないという点は強調されている。
リリーススケジュールと現在地
ロードマップエントリは2026年10月2日に追加され、10月7日に最終更新された。以下の2フェーズが予定されている。
- Targeted Release(対象限定リリース):Microsoftが指定した一部のテナント・ユーザーに先行提供される段階。新機能を早期に検証したい組織向けのプログラム
- General Availability(一般提供):全対象テナントへの展開が完了し、正式リリースとなる段階
クラウドスコープはWorldwide Standard Multi-Tenantと分類されている。なお2026年11月は「ロールアウト開始」の予定日であり、すべての対象組織が即日利用できるわけではない。
現時点での評価
統合フレームワークとして設計されている点は、Microsoftがセキュリティ機能のエコシステムを育てる方針と一致している。一方で、精度・運用フロー・データポリシーといった実運用上の核心部分が未開示のまま発表されているため、導入計画を立てるには情報が不足している状態だ。セキュリティチームとしては、認定プロバイダーリストの公開と精度データの開示を待ってから具体的な評価を行うのが現実的だろう。
詳細はMicrosoft Teams to Introduce Deepfake Detection to Identify AI-Generated Audio and Video in Meetingsを参照していただきたい。




