6月26日、PYMNTSが「House Bill Would Require Frontier AI Developers to Report Dangerous Activity」と題した記事を公開した。
フロンティアAI開発者に7日以内の報告義務
6月25日(木)、テキサス州選出の共和党下院議員ナサニエル・モラン(Nathaniel Moran)氏が「AI Incident Reporting Act」を下院に提出した。この法案は、フロンティアAIモデル(最先端の高性能AIモデルを指す)の開発者に対し、モデルの危険な能力、セキュリティ侵害、安全インシデントを商務長官(Secretary of Commerce)に報告することを義務付けるものだ。
報告のタイムラインは厳格で、危険な活動を発見してから7日以内に開発者が商務省へ報告書を提出しなければならない。さらに商務省は、最も深刻なインシデントについて48時間以内に議会指導部および関連委員会の委員長へ報告する義務を負う。
対象となるAIモデルの範囲は商務省が決定する。法案では、報告閾値(しきい値)の設定にあたってAI開発者や専門家との協議を義務付けており、「技術的な実態を反映し、業界に不必要な負担を課さない」枠組みを目指している。
モラン議員はプレスリリースの中でこう述べている。
"AIはイノベーションの強力なエンジンだ。私はそれが栄えることを望む。だが、説明責任なしに、人間による監視なしにではない。法の支配はこの新たなフロンティアにも適用されるべきだ。"
競合する連邦AI規制法案との比較
フロンティアAIの規制立法をめぐっては、6月4日にも別の動きがあった。超党派の下院議員2名が「Great American AI Act」のディスカッションドラフト(議論叩き台)を公開している。こちらはより広範な連邦フレームワークを目指す法案で、主な内容は以下の通りだ。
- AIモデルの開発に関する州・地方の法律・規制を3年間停止(プリエンプション)
- フロンティアAIの透明性確保と独立した検証機関による監査・評価の義務化
- AIウィッスルブロワー(内部告発者)への報復禁止保護
モラン議員はロイターの取材に対し、自身の法案はGreat American AI Actと比べてより的を絞った内容であり、早期の立法化や超党派の支持獲得が見込みやすいと述べた。
立法への期待と現実
AI Policy Networkのマーク・ビール(Mark Beall)代表はロイターに対しモラン法案への支持を表明しつつ、こう語った。
"AIに関する立法はこれまでほとんど成立のチャンスがなかった。だが、何らかの行動を求める世論の高まりは感じている。"
この発言が示すように、米国では連邦レベルのAI規制立法が長年にわたって停滞してきた経緯がある。議会では超党派による合意形成の難しさに加え、イノベーション阻害を懸念するテック業界からの強い反発、そして「規制の範囲をどう定義するか」という技術的な複雑さが壁となり、包括的な立法は繰り返し棚上げされてきた。一方、EUではAI Actが2024年に成立・発効しており、リスクベースの包括規制を先行して整備した欧州との対比で、米国の立法空白が国際的にも注目されている。
今回のAI Incident Reporting ActはGreat American AI Actとは別の切り口から、まず「インシデント報告」という具体的かつ限定的な義務付けで突破口を開こうとするアプローチだ。包括的な規制枠組みを一度に立法しようとするのではなく、報告義務というシンプルかつ測定可能な要件に絞ることで、イデオロギー的対立を回避し、超党派の賛同を得やすくする戦略とも読める。この「スモールステップ型」の立法アプローチが実際に機能するかどうかが、成否のカギとなる。
詳細はHouse Bill Would Require Frontier AI Developers to Report Dangerous Activityを参照していただきたい。




