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Deep Dive

IBMが一日で時価総額10兆円を失った理由 — AIバブルの恩恵を受けられないレガシー大手という構造問題

7月15日、Inside AI News が「IBM Loses $70 Billion in a Day After CEO Admits AI Missteps」と題した記事を公開した。IBMのCEOがAI戦略の失敗を認めた直後に株価が急落し、同社史上最大の時価総額消失を記録した件を詳報している。

7月15日、Inside AI News が「IBM Loses $70 Billion in a Day After CEO Admits AI Missteps」と題した記事を公開した。IBMのCEOがAI戦略の失敗を認めた直後に株価が急落し、同社史上最大の時価総額消失を記録した件を詳報している。


CEOの「失敗を認めた」一言が引き金に

2026年7月15日(火)、IBMの株価は25%急落し、時価総額にして約700億ドル(約10兆円)が一日で消えた。CEO Arvind Krishna がAI戦略において「つまずいた(faltered)」と投資家に率直に認めたことが引き金となった。

この下落幅は、IBMの115年の歴史で最大の一日損失であり、1987年のブラックマンデーをも上回る。

Krishnaが明かした経緯はこうだ。6月の最終数週間に、企業顧客が四半期の設備投資(capex)をサーバー・ストレージ・メモリの購入へと急激にシフトした。価格上昇が見込まれる前に、供給が逼迫しているインフラを確保しようとする動きだ。

「供給制約に関連した影響はある程度想定していたが、設備投資の優先順位がここまで大規模に変わるとは予測できなかった」——Krishnaはそう語った。


IBMが直撃された構造的な問題

今回の問題の本質は、一時的な需要変動ではなく、AIが引き起こした企業予算の構造転換にある。

企業の投資先がチップ・インフラ・サイバーセキュリティに集中する中、IBMのコア事業であるメインフレーム、ソフトウェア、コンサルティングへの需要が押し出されている。複数の大型案件がクローズできず、IBMは第2四半期の売上予測を172億ドルに下方修正。アナリスト予想の178.6億ドルを大きく下回った。

IBMのメインフレームは銀行や航空会社のトランザクション処理を支える基幹インフラだが、こちらも業績悪化が見込まれる。さらにKrishnaは、AIによって攻撃がより高度化したことでサイバーセキュリティ支出が急増していると指摘した。具体例として同氏が挙げたのが、Anthropicの高度なモデル「Mythos」がソフトウェアの脆弱性を自動で発見できるという事例だ(※「Mythos」というモデル名は元記事内で言及されているものであり、Anthropicが公式に発表したモデルとは現時点で確認できない点に留意されたい)。


波及した「ソフトウェア株の連鎖安」

Krishnaの発言は市場全体に波及した。Microsoft、ServiceNow、Salesforce、Intuit がそれぞれ2〜5%下落した。

IG GroupのチーフマーケットアナリストであるChris Beauchampはロイターに対し、次のように語った。

「IBMとソフトウェア株にとって醜い瞬間だ。インフラとサイバーセキュリティへのシフトがいつまで続くかが焦点になる。数ヶ月なら耐えられるが、それ以上続くようなら、ソフトウェア株全体に対して再び深刻な疑問が突きつけられることになる」


IBMの対抗策と、その限界

IBMはここ数年、Red Hat の買収(2019年、約340億ドル)による高利益率事業へのシフトや、量子コンピューティングへの注力を戦略の柱に据えてきた。Red Hat買収はIBMがクラウドネイティブ・エンタープライズ市場へ本格参入するための布石として位置づけられていたが、その効果が問われる局面に差し掛かっている。2029年までに初の大規模量子コンピュータを構築するため100億ドル超の投資を宣言しており、OpenAI とのAIパートナーシップも結んでいる。

しかしこれらの取り組みはいずれもまだ緒に就いたばかりであり、コア事業の侵食を補うには至っていない。

SoftBankの孫正義が「AIは2040年までに年間5兆ドルの投資を必要とする」と予測しているように、企業予算の重力は今、チップとインフラに向かっている。この潮流の中でIBMのようなレガシー大手がいかに立ち位置を確保するか、7月22日に予定されている第2四半期の決算発表が次の試金石となる。

詳細はIBM Loses $70 Billion in a Day After CEO Admits AI Misstepsを参照していただきたい。