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AIがリーマン予想の証明に失敗した過程が、人間の数学者の新発見を生んだ — 「下手な掘り方」が宝の在処を教えることもある

10月2日、Benjamin Skuseが「AI's failed attempt to crack the Riemann hypothesis still led to a breakthrough」と題した記事を公開した。この記事では、AnthropicのAIモデルClaudeがリーマン予想の証明に失敗した過程が、人間の数学者による新たな発見につながった経緯について詳しく紹介されている。以下に、その内容を紹介する。

10月2日、Benjamin Skuseが「AI's failed attempt to crack the Riemann hypothesis still led to a breakthrough」と題した記事を公開した。この記事では、AnthropicのAIモデルClaudeがリーマン予想の証明に失敗した過程が、人間の数学者による新たな発見につながった経緯について詳しく紹介されている。以下に、その内容を紹介する。


ClaudeはAIらしく突破しようとし、人間の数学者はそこから着想を得た

AIが数学の未解決問題に「正解」を出せなかったとしても、それが人間の研究を前進させることはあるのか——この問いに対する具体的な事例が報告された。

今年8月、Anthropicは未公開バージョンのClaudeを用いてリーマン予想の証明に挑んだプレプリント論文とブログ記事を公開した。リーマン予想とは、1859年にドイツの数学者ベルンハルト・リーマンが提唱した仮説で、素数の分布の「隠れた秩序」を記述するものだ。具体的には、リーマンゼータ関数の(非自明な)零点がすべて複素平面上の一本の垂直線上に並ぶと予想している。これが証明されれば、素数の分布に関する規則性が確定し、数学や暗号理論に広範な影響をもたらす。クレイ数学研究所が2000年に設定したミレニアム懸賞問題の一つでもあり、解決者には100万ドルの賞金が用意されている。

Anthropicのオペレーターを務めるJarred SumnerがClaudeにリーマン予想を解くよう促したのは7月末のことだ。Claudeは600を超える証明のアプローチを試みたが、いずれも成功しなかった。次のセッションでSumnerが「能力を信じて大きく飛躍してみて」と励ましたところ、Claudeは端的に返した。

「それは自信の問題じゃないので、信じることで解決できるわけじゃない」

「見出しの数字」より「新しいアイデア」が重要

リーマン予想の証明には至らなかったものの、Claude-人間チームは別の目標に切り替えた。リーマン予想の周辺問題として、「ゼータ関数の零点のうち何%が垂直線上にあるか」という問いがある。1989年以来、数学界では**少なくとも40%が線上にあることが知られていた。Claudeはこれを67.25%**まで引き上げることに成功した。

ただし、これはリーマン予想の解決に直結しない。リーマン予想が要求するのは「例外なく100%」であり、「ほぼすべて」では不十分という数学的な厳密さがあるからだ。

2022年のフィールズ賞(数学界のノーベル賞に相当)受賞者でオックスフォード大学のJames Maynard教授は、この67.25%という数字そのものよりも別の点を評価している。

「私が非常にポジティブに捉えているのは、Claudeの証明の中に、問題により直接的に作用する新しいアイデアが含まれているという点だ」

人間の数学者が「AIには見えなかったもの」を見つけた

フランスのロレーヌ大学でリーマン予想関連分野の専門家を務めるYouness Lamzouriは、論文を読み始めたものの数時間で諦めた。「何かあるとは感じたが、複雑すぎた——それは人間的ではなかった」と語る。

そこでLamzouriは方針を変え、Claudeの証明が参照していた既存の論文群を読み返した。すると、Claudeが見逃していたことに気がついた。特定の制約を方程式に加えることで、証明の複雑な部分の大半を回避できることを発見したのだ。

Lamzouriが独自に構築した証明は、同じ67.25%という結果を、より直感的かつシンプルな方法で導くものだった。さらに、このアプローチは追加の知見も生み出した。「線上にもなく単純でもない零点("not simple and not on the line")」の割合が**最大11%**であることを証明できたのだ。

Lamzouri自身はこの経緯をこう表現する。

「考古学の現場に大型機械を持ち込んで宝を掘り出すようなもの。でも人間は通常、もっと慎重にやる。なぜそこに埋まっているのかを理解したいから。それがClaudeと私の間で起きたことだ」

OpenAIのナビエ-ストークス証明との対比

この話が注目される背景には、OpenAIが約1万のAIエージェントを用いてナビエ-ストークス問題の証明を生成した件がある。こちらは人間の数学者がその内容を検証しきれておらず、証明が人間の理解に何か新しいものをもたらしているかも不明のままだ。ミレニアム懸賞問題の設定趣旨は「ブルートフォースで解くこと」ではなく、「新たな技法を生み出し、関連分野の理解を深めること」にある。

その点でClaudeの失敗は、Lamzouriという人間研究者の発見を触媒した。Maynardはこれを「AIを活かした研究の進め方として、ポジティブな事例」と評価している。

Lamzouriも今後の展望についてこう述べる。「Claudeにインスパイアされて新しい見方を発見できた。これは数学の他の分野でも同様のことが起きると思う。AIが発見し、人間が異なる視点から概念を見るきっかけを得て、理解を深めていく」


詳細はAI's failed attempt to crack the Riemann hypothesis still led to a breakthroughを参照していただきたい。